クラシックカー

【虫を追いかけて】その辺にはない、幻のスイッチ探し

2025/07/03

1950年代、イタリアには個性派ぞろいの小規模スポーツカーメーカーがひしめいていました。
Stanguellini、Moretti、Bandini、OSCA、Cisitalia、Nardi、Siata、Ermini、Taraschi…。
どの名前も、自動車好きにとってはちょっと胸が高鳴る響きではないでしょうか。

日本ではこれらの小さく軽快なイタリア車たちを、**親しみとちょっとした皮肉を込めて「虫」**なんて呼んでいた時代がありました。
確かに、ちっこくてチョロチョロ動き回る様子は虫っぽい(笑)。

そんな「虫」たちは、生産台数も少なく、実は同じモデル名でも個体ごとに中身が違うという、ある意味“手作り感満載”の車たちです。
当然、部品探しは一筋縄ではいきません。

 

今回のご依頼は「虫のスイッチ」

そんな虫の一台に取り付けられていたダッシュボード用のスイッチを探してほしい、というご依頼。
しかも手元にあるのは画像1枚だけ。

switch000

「これは…難易度高めのやつだな」と思いつつ、なんとなく記憶に引っかかるものがありました。

 

ヒントは「フィアット + α」

これらの虫たち、基本的にはFIATのエンジンやパーツをベースにして作られています。
ただし、全てがFIAT製というわけでもなく、時には他のメーカーやオリジナル部品が混じっているのが厄介。

今回もまずはFIAT周辺からあたりをつけて調査スタート。
もちろん、こう書くと簡単そうですが、実際には数週間かかってます
ようやく「これかも…?」というスイッチに辿り着いた時のドキドキ感は、もう毎度のことです(笑)。

 

問題は「ノブが光を通すか」

スイッチの形状だけでなく、今回のカギは白いノブ部分が光を通す構造になっているかどうか。
これ、安価なレプリカ品では結構な確率でアウトなんです。
見た目はそっくりでも、ノブが不透明だったりして「違う…」ってなる。

そこで、過去の経験とデータベース、そしてネットの力を総動員して、
「これはイケるかも」というスイッチを発見。取り寄せました。

 

結果は「バッチリ!」

手元に届いてすぐに検品。

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ノブも光を通し、形状もバッチリ。
お客様に送って最終チェックをお願いしたところ、

「バッチリでした!」

とのご連絡をいただき、ようやくひと安心です。

 

成功の裏にある残骸たち…

ちなみにこのような作業、成功ばかりじゃありません。
机のまわりには、「惜しいけど使えない」部品たちがゴロゴロしています(笑)。
でも、それも含めてこの仕事の楽しさでもあり、奥深さでもあります。

 

「虫」と呼ばれた1950年代のイタリア車たち。
その部品探しは、まるで昆虫採集のような粘りと観察眼が必要です。
でも、そうやって見つけ出したパーツが、再び車に命を吹き込む瞬間は、何ものにも代えがたい喜びです。

また一匹、虫を追いかけた日々の記録でした。